最近の処方の多くは、柔軟性を与える、溶解する、コンディショニングするといった役割に加えて、微生物の増殖を抑える働きも持つ成分に頼っています。サプライヤーはこれらを多機能成分、あるいは化粧品の防腐ブースターと呼んでおり、ブランドからは「ブースターで従来型の防腐剤を置き換えられるか、少なくとも減らせるか」というご質問がよく寄せられます。正直なところ、これらの成分は役に立ちますが、その組み合わせで十分かどうかは、実際の処方で行うチャレンジテストでしか確認できません。
目次
結論
防腐ブースターや多機能成分は防腐システムを補強できますが、その効果は処方に大きく左右されるため、ある製品ではチャレンジテストに合格しても、別の製品では不合格になることがあります。サプライヤーの推奨添加量は出発点であって、証明ではありません。最終処方で試験を行い、できれば予定の添加量と、やや低い量・やや高い量を比較し、署名入りの報告書を安全性評価者のために保管してください。また、頼りにしているすべての成分について規制上の位置づけも確認してください。主に防腐を目的として使う物質は、EUの許可防腐剤リストの対象になる場合があります。
ブースターと多機能成分とは
ブースターとは、主となる防腐剤の性能を高め、より少ない量で、あるいはより幅広い微生物に対してシステムが働くようにするために添加する成分です。多機能成分は、保湿、溶剤としての働き、肌のコンディショニング、香料の保持といった主な役割を持ちつつ、副次的にある程度の抗菌活性も示す成分です。
よく使われる例として、ペンチレングリコール、カプリリルグリコール、ヘキサンジオールなどのグリコール類、エチルヘキシルグリセリンやカプリル酸グリセリルなどのグリセリン誘導体、植物由来や発酵由来のブレンドがあります。リストは常に変化しており、成分ごとに得意不得意があります。主に細菌に作用するものもあれば、酵母やカビに作用するものもあります。
多機能成分は法律上、防腐剤にあたるのか
EUでは、化粧品規則(EC) No 1223/2009の附属書Vが、化粧品に使用できる防腐剤のポジティブリストです。防腐剤とは、一般に、製品中の微生物の増殖を抑えることだけを、または主な目的として添加される物質と理解されています。附属書Vには、各成分の最大濃度と使用条件が定められています。
- 成分が附属書Vに載っており、防腐のために使う場合は、記載された上限が適用されます。
- 成分が附属書Vに載っていない場合、主に防腐剤として働かせる目的で添加することはできません。使用量において本来の化粧品としての主たる機能がある場合に限り、多機能成分として一般に認められます。
- 成分名だけでなく、使用目的が重要です。主たる機能に必要な量を大きく上回り、明らかに防腐を狙った量であれば、当局から疑問を持たれる可能性があります。
規則や解釈は変わることがあり、成分によって答えが異なる場合もあります。ご自身の処方について、安全性評価者に書面で確認してもらってください。

処方の条件がすべてを決める理由
軽いローションでよく働く成分が、界面活性剤を多く含むシャンプーや、油分の多いバームではほとんど効かないことがあります。結果はいくつもの要因に左右されます。
- pH。多くの防腐剤、特に有機酸はpHに依存します。ブースターはpHの影響を受けにくい場合もありますが、それでもpHはシステム全体を左右します。
- 界面活性剤と乳化剤。微生物が増える水相から、防腐剤を結合させたり分配させて遠ざけたりすることがあります。
- 油分と粉体。親油性の成分、クレイ、デンプンは、有効分子を吸着したり、栄養源になったりすることがあります。
- 水分活性と溶解性。完全に溶けないブースターは、設計どおりには働きません。
- 容器と製造工程。添加時の温度、混合の順序、容器の材質によって、実効的な添加量が変わることがあります。
このため、サプライヤーのデモ処方での結果を、そのままご自身の処方に当てはめることはできません。技術データシートは理想的な条件のモデル処方を前提に書かれており、独自の香料、有効成分、pHを持つ実際の製品が、それと同一になることはまずありません。
妥当な試験プログラムの組み方
- 成分ではなく処方から始める。まずベース、pH、容器を決めます。
- いくつかの案をスクリーニングする。主たる防腐剤とブースターの組み合わせを2~3通り用意して処方を作ります。ラボによっては目安としてこれらを並行して試験でき、処方のやり直しの回数を減らせます。
- 最も良い候補を選び、最終に近い処方でISO 11930:2019やUSP 51などの認められた規格により本試験を実施します。この報告書が製品ファイルに入ります。
- 安定性を確認する。防腐効果は使用期限まで保たれる必要があるため、結果を最終容器での安定性試験と関連づけます。
- 完成品を随時確認する。生産ロットに対する微生物規格試験で確認します。
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どの結果が必要か
ISO 11930には、合格基準AとBがあります。基準Aは推奨される効力レベルを示し、基準Bは、Aを満たせない場合に根拠を付けて認められることがある、より低いレベルです。ブースターに頼った減量型の防腐システムは、まさに評価者がどちらの基準を満たしたのか、またその理由を詳しく確認する場面です。基準Aを目指し、Bへの切り替えは書面で根拠を示すべき判断として扱ってください。合格しなかった低い添加量の結果を含め、スクリーニング結果も保管してください。選んだ添加量にどれだけの余裕があるかを評価者に示せます。

よくある弱点
- カビと酵母。ブースターによっては真菌への効果が弱く、防腐剤を絞ったシステムでは、試験のカビ菌株で苦戦することがよくあります。
- グラム陰性菌。Pseudomonas aeruginosaなどの菌は、水分が多く防腐剤の少ない製品では手ごわい相手になることがあります。
- ロット間のばらつき。天然系のブレンドはロットによって異なることがあります。試験はお送りいただいたロットについてのものです。
- 使用感の限界。防腐に十分な量では、べたつく、香りに影響する、肌を刺激するといった問題が出ることがあり、安全性と品質の両面の課題になります。
- 経時変化。0日目の効果が、使用期限間際の効果を保証するわけではありません。
表示とクレーム
マーケティングで「防腐剤フリー」や「防腐剤不使用」とうたいながら、処方が製品を守るために添加された成分に頼っている場合、裏付けが難しい表示になるおそれがあります。表示は規則(EU) No 655/2013に基づき、真実で立証されたものでなければならず、当局は成分の実際の機能に注目する傾向があります。製品は正確に表現し、印刷の前に文言を評価者と相談してください。
試験を繰り返すべきとき
次のいずれかがあれば、以前の結果が今も当てはまるかを確認するサインです。ブースターのグレードやサプライヤーの変更、添加量の変更、新しい香料や有効成分、pHの変動、別の種類の容器への切り替え。処方が変われば、通常は新たに試験を行います。
ご注文時にご提出いただくもの
全成分と配合率、pH、予定している使用期限、容器をご記載ください。どの成分を防腐剤として、どの成分をブースターとして使う意図なのかも明記してください。これにより、ラボは中和剤を適切に選び、誤った結果を避けることができ、CPSRの評価者は防腐の考え方を判断するための情報を得られます。
よくある質問
ブースターで主たる防腐剤を置き換えられますか?
従来型の防腐剤を減らして、組み合わせで機能する場合もありますが、単独で成立するかどうかは、成分、処方、規制上の位置づけによって決まります。前者はご自身の処方でのチャレンジテストでしか答えが出ず、後者は評価者が判断します。
天然のブースターにもチャレンジテストは必要ですか?
はい、必要です。天然由来や植物由来であることは、システムが微生物をどれだけ防げるかとは関係ありません。水を含む製品は、成分の由来にかかわらず防腐効力試験が必要です。
1回の合格結果で、すべての製品に対応できますか?
いいえ。結果は試験した処方にのみ適用されます。ベース、pH、香料が異なる類似製品には、それぞれの根拠、または評価者による文書化された正当化が必要です。
重要なポイント
- ブースターや多機能成分は防腐を補強できますが、すべての処方で合格するとは限りません。
- 主に防腐を目的として使う成分は、EUの許可防腐剤リストへの掲載が必要な場合があります。位置づけは評価者に確認してください。
- 最終に近い処方で、できればいくつかの添加量を比較し、ISO 11930:2019またはUSP 51で試験してください。
- 署名入りの報告書を製品ファイルに保管し、システム、サプライヤー、処方が変わったときは試験を繰り返してください。
